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日程

2013年9月2日(月)午後から9月6日(金)午前まで (4泊5日).

会場

箱根高原ホテル
〒250-0522 神奈川県足柄下郡箱根町元箱根(湖尻)164
TEL:0460-84-8595 FAX:0460-84-9488

対象者

原則として数学系の大学院に属する学生および大学・高専等の数学教員.

講演者(予定)

 

概要

2013年度整数論サマースクールのテーマは,非アルキメデス局所体上の簡約代数群 (以下では $p$ 進簡約群と略称します) の(複素係数)許容表現の理論です.

前半:一般線形群の表現

この分野は1950年代なかばに Mautner, Bruhat, Gelfand-Graev らによって始められ,1960年代前半までに $\mathrm{SL}_{2}(F)$ の既約表現の記述が完成しました.保型形式を $\mathrm{SL}_{2}(\mathbb{R})$, またはアデール群の表現とみなすこともほぼ同時期に Gelfand-Fomin らによって始められ,当初から $p$ 進群の表現論が保型形式を動機としていたことがわかります.1960年代末期から Langlands は非可換類体論を保型表現と Galois 表現を用いて定式化することを提起し,Jacquet-Langlands はこの立場から $\mathrm{GL}_{2}$ のアデール群の保型表現を記述しました [JL70].それ以来,局所体上の簡約代数群の既約表現は局所類体論の非可換化である 局所Langlands対応 として記述されると期待されています.

Harish-Chandra は Langlands の Eisenstein 級数のスペクトル理論に触発された「定数項とカスプ形式」のアイディアを展開しました.特に $p$ 進簡約群の超カスプ表現を導入し,任意の既約表現を既約超カスプ表現からの放物型誘導表現の組成因子として構成します.一方,Gelfand-Kazhdan は Jacquet-Langlands の結果を拡張して $\mathrm{GL}_{n}(F)$ の既約表現の(退化) Whittaker 模型 (または表現の導分) を記述します [GK75].Bernstein-Zelevinsky はこの理論を活用して $\mathrm{GL}_{n}(F)$ の放物型誘導表現の構造を決定し,$\mathrm{GL}_{n}(F)$ の局所 Langlands 対応を既約超カスプ表現の場合に帰着します [Zel80].$\mathrm{GL}_{n}(F)$ の超カスプ表現に対する局所 Langlands 対応は多くの数学者の重要な貢献の末,1998年に Harris-Taylor と Henniart により解決されました [HT01], [Hen00]

このサマースクールの前半部では $\mathrm{GL}_{n}(F)$ に対象を絞り,上の Bernstein-Zelevinsky の結果までの進展を解説します.実解析の複雑さから基礎概念の定式化が難しい実 Lie 群の場合と異なり,$p$ 進群では代数的で簡潔な定義を使って表現論の一般的な構造に触れることができます.また $\mathrm{GL}_{n}$ に対象を限ることで,線型代数群についての耳慣れない概念を避けて,放物型誘導や Jacquet 加群などの基本的な道具を体感してもらえると考えています.前半部の最後には $\mathrm{GL}_{n}(F)$ の表現に付随する $L$, $\varepsilon$ 因子や局所 Langlands 対応の構成について概説します.

後半:古典群の表現へ

局所Langlands対応の構成にも用いられる志村多様体がシンプレクティック群やユニタリ群など $\mathrm{GL}_{n}$, ($n\geq 3$) を除く一部の古典群にのみ存在することもあって,古典群の表現論も重要になってきます.Harish-Chandra は一般の $p$ 進簡約群上の調和解析の研究を進め,放物型誘導表現の構造や既約緩増加表現の分類について定性的な記述を得ました [Sil79].しかしGelfand-Kazhdan理論は $\mathrm{GL}_{n}(F)$ 以外には拡張できないため,誘導表現の可約性の判定条件などの実効的な結果は,誘導する古典群の表現に対する局所Langlands対応によるしかないと考えられています.

一方で $\mathrm{GL}_{n}(F)$ 以外の簡約代数群の場合には,複数の既約表現が同一の $L$ 因子などの不変量を共有し,しかもそれらの保型形式への寄与が異なるという $L$不可分性 の現象が起きます.$L$ 因子を共有する表現の集合,いわゆる $L$ パケットのメンバーを見分けるために Langlands, Kottwitz, Shelstad は内視論 (endoscopy) という理論を作り,基本補題という予想のもと,Arthur-Selberg 跡公式の比較によってその理論が確立できると提案しました (1970–90年代) [Lan83], [KLR+84].彼らは齋藤・新谷のベースチェンジリフトに触発されて,ひねり付きの内視論  (twisted endoscopy) も同時に導入します.多くの古典群は $\mathrm{GL}_{n}$ のひねり付き内視群であるため,古典群の局所 Langlands 対応を含めた表現論を $\mathrm{GL}_{n}$ のひねり付き跡公式と古典群の跡公式の比較から引き出すプログラムが形作られました [Art90].このプログラムは基本補題の解決や安定跡公式の確立を経て,シンプレクティック群や直交群の場合は Arthur により解決されたようです [Art13]

サマースクールの後半ではまず,Harish-Chandraによる $p$ 進簡約群上の調和解析から

  • 行列成分の挙動による表現の区分け (二乗可積分表現や緩増加表現など)
  • 既約緩増加表現の定性的な分類
  • 緩増加表現の分類を用いた既約許容表現の分類

といった基本的なトピックを紹介します.ついで2変数や3変数の低次ユニタリ群を題材に,内視論や $\mathrm{GL}_{n}$ のひねり付き内視論によって得られる表現の $L$ パケットやその内部構造の記述を概説します.低次ユニタリ群では $\mathrm{GL}_{n}$ のひねり付き内視論がベースチェンジと呼ばれる比較的わかりやすいものになっていますが,その一方で一般の場合に起きる面白い現象が現れる好適な例になっています.最後に $\mathrm{GL}_{n}$ の局所 Langlands 対応の構成にも用いられた幾何的な表現の構成や,それと内視論の関連について最近の話題も含めて概説します.

 

参加費用

全日程参加して多人数部屋に宿泊した場合,4から5万円前後を予定しています.
職をお持ちの方と学生の方とでは金額に傾斜をつける予定です.

旅費の補助について

一部の参加者に対して,旅費の補助を行うことを検討しています.

プレサマースクールと宵の時間

9月2日の午前10時30分からプレサマースクールを行う予定です.局所体,局所類体論,有限群の表現論など,サマースクールで必要となる基本的なことを解説します.

また同日の夕食後に,希望者による気軽な形式の講演会を行います.数学の話題であれば分野を問わず,ご自身の研究発表や研究分野の紹介,問題提起などなんでも結構です. 詳細については参加申込時受付時にご案内します.

サマースクール世話人